mri 株式会社三菱総合研究所

過去のプログラム

INCF ビジネス・アクセラレーション・プログラム 2018
最終審査会

2018年9月18日に、大手町のGlobal Business Hub Tokyoにて「INCF ビジネス・アクセラレーション・プログラム 2018」の最終審査会を開催しました。



「ビジネス・アクセラレーション・プログラム」では、INCFが注力する社会課題6領域「ウェルネス」「水・食料」「エネルギー・環境」「モビリティ」「防災」「教育・人財育成」を中心に、革新的技術を活用したビジネス案を幅広く募集しました。また、今回から、ビジネスを一層加速させることに注力し、これまでの「ビジネスアイデアコンテスト」から改称して実施しました。


当日のコンテストでは、応募総数110件のなかから、書類審査とプレゼンテーション審査を経て選出された7チームのファイナリスト(ウェルネス4、モビリティ1、教育・人財育成1、水・食料1)がプレゼンテーションを行いました。国内外の有識者・専門家5名(INCFアドバイザリーボードメンバー)による厳正な審査の結果、最優秀賞、三菱総研賞、特別賞を決定しました。また、当日会場にお越しの皆様にご投票を頂き、プレゼンテーションが一番優れていたファイナリストを「ベストピッチ賞」として選出しました。また、ファイナリストに加え、技術的に優れた製品・サービスを提案した5応募者を別途「技術賞」として選出し、事務局より表彰を行いました。


受賞者・ファイナリスト・技術賞受賞者および審査員は以下の通りです。

審査員

審査委員長

小宮山 宏
株式会社三菱総合研究所 理事長

審査員(順不同)

リチャード・ダッシャー氏
スタンフォード大学 米国・アジア技術マネジメントセンター 所長
各務 茂夫氏
東京大学 産学協創推進本部 教授
鎌田 富久氏
TomyK Ltd. 代表/株式会社ACCESS 共同創業者
宮城 治男氏
NPO法人 ETIC. 代表理事

最優秀賞

専門医による集中治療支援ソリューション
株式会社T-ICU



病院から提供された生体モニター情報(心電図、採血データ等)をもとに、遠隔地から集中治療専門医が24時間体制で治療を支援。高いレベルの集中治療が提供できる環境作りと現場の医療従事者の負担軽減さらには医療費削減に貢献するビジネス案を提案。


背景にあるのは、ICU(集中治療室)専門医の絶対的な不足です。約32万人の医師のうち、集中治療専門医はわずか0.5%の1,600人足らず。全国にあるICU 1,100室のうち、集中治療専門医常駐のICUは300室に過ぎません。急性期医療、救急医療においてICUの果たす役割は極めて大きく、ICUの体制いかんで患者の生命や予後が大きく左右されてしまいます。


システムは、ICU専門医とICUをカメラやモニター等でつなぐというもの。専門医は遠隔でモニタリングしながら、現場での処置を指導します。T-ICUではICU専門医をネットワーキングし、365日24時間対応できる体制を構築。今後、日本での普及を目指します。一方、アメリカでは遠隔治療がすでに普及し、全米の20%をカバーしています。効果の検証も進み、19万件の症例でICU死亡率が17%減少、病院内死亡率は26%減少、ICU入室期間は0.63日短縮などの成果が報告されています。


今後、T-ICUではこの遠隔治療システムの日本普及とともに、ICU専門医の人材育成、在宅医療、救急・麻酔医療など他分野医療、災害時医療など他分野医療への応用を検討していくとしています。

三菱総研賞

スマホ制御型宅配ボックスによる社会問題解決と生活利便性の飛躍的向上
株式会社マッシュルーム



ECの利用増加に伴って社会問題化した「再配達問題」。スマホ認証型宅配ボックスをマンションや商業施設などに設置普及することで、利便性の高い場所での非対面での荷物授受運用を可能とし、早期の再配達問題解消の実現を提案。


「VOX」の基本システムはきわめてシンプルで、同社が持つスマホの認証システムをボックスのキー部分に実装。スマホ通信だけを使用するため、ボックス側のネットワーク施工は不要、且つ、使用電力は非常に小さく、箱に設置したソーラーセルだけで給電が可能。そのため電源の施工も不要となり、設置が簡単で安価なシステムとして競合優位性に優れています。


また、代表の原庸一朗氏は「ひとつの製品で複数の課題を解決したい」として、VOXを社会インフラとして機能させることで、レンタル業、買い物代行、フードデリバリー、シェアリング、クリーニングなどの事業化が想定できるとしています。

特別賞

歩容解析を行うスマートフットウェアORPHE TRACKの開発
株式会社ノーニューフォークスタジオ



「ORPHE TRACK」 は靴にセンサーコアを内蔵し、ユーザが履いているだけで歩容を精密に記録・解析できるウェアラブルデバイス。ランニングのアドバイス、業務改善や見守り、保険や医療との連携などさまざまなサービスに連動が可能です。


オルフェ・トラックに組み込むコアユニットは小型で軽く、複数のセンサーと独自アルゴリズム(歩く動態を解剖学的・生体力学的に解析する「歩容解析」)によって、歩数、歩幅、移動方向、距離、走行速度、左右バランスなどのデータを取得できます。これらデータから、ユーザーの運動能力、行動状況、身体と精神の健康状態などが分かり、今後、医療・健康分野における活用等、歩容データの活用可能性が大いに期待されます。まずはランナーを対象にし、走行解析から、ランナーの約3割が苦しめられるという膝の怪我を予防するための着地法の分析を実現。高額で専門的な機材を使った測定とほぼ同等の96%の精度で解析ができるようになりました。

ベストピッチ賞

排泄予測デバイス『DFree(ディーフリー)』
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社



『DFree』は、超音波センサーで膀胱の大きさを捉え、事前に排泄のタイミングをお知らせする世界初のウェアラブル IoTデバイスです。尿失禁に悩む高齢者が主な対象者で、名称は「Diaper(おむつ)Free」に由来しています。


世界では、約5億人が排泄に関する悩みを抱えているといわれており、特に高齢者介護の現場においては排泄に関するケアが最も大きな負担となっています。このDFreeにより、全業務の約25%を占める排泄ケア業務の時間が減り、介護負担の軽減や介護従事者の離職を食い止める効果も期待されています。また、利用者にとっては、失禁のリスクが減ることで行動も積極的になると共に、尿失禁の防止が転倒リスク軽減、ひいては死亡リスクの軽減にもつながっているという結果も得られています。


今後は、個人向け商品も含め、マーケティング及び販売チャネルの拡大に務める一方で、海外の市場にも注力していく方針です。今年9月にアメリカ、11月からフランスで販売を開始し、中国の市場調査にも着手します。現在世界の高齢者介護サービス市場は全体で約65兆円、うち排泄ケア関連市場は人件費を含めて約10兆円あると見込まれており、大きなインパクトを与えることが期待されています。

ファイナリスト

脳梗塞リスク評価事業
株式会社アミンファーマ研究所


脳梗塞は高齢者のQOLを著しく低下させるばかりか、認知症の間接的な原因とも目されており、その治療、予防は大きな医療テーマのひとつとなっています。

アミンファーマは、アルデヒドの一種「アクロレン」が、脳の細胞増殖阻害を起こしていることを発見し、脳梗塞のバイオマーカーとして活用するビジネスを開発。現在、人間ドックでも導入され、年間1万8,000人が受診しています。


今後のさらなるビジネスの可能性として、アクロレンを認知症マーカーとして利用することを発表。アクロレンとタンパク質の一種のアミロイドβの量が、認知症の前駆症状である白質病変と相関性があることが分かり、早期の認知症予防に役立つと判明。従来の画像検査でも発見できない病変を検出できる検査法として期待されており、2年以内の事業化を目指します。また、アクロレンを除去する効果のあるアミノ酸「システイン」を使った認知症予防薬の開発にも着手しています。

選択収穫野菜の収穫ロボットサービス
inaho株式会社


就農人口が今後10年で半減すると言われる中、農業の生産性向上は喫緊の課題です。その課題解決のため、現在、目視による判断が必要で、且つ人手により収穫されている野菜を、センシングと AI を駆使して自動で収穫できるロボットサービスを提案。収穫用ロボットは無償でレンタルし、農家とともに収量・収入アップの実現しようとしています。これにより地域農業の衰退を抑止し、生産性向上で国際競争力を高めることを目指します。

対象となるのは、トマトやナスなど選択的な収穫作業が必要な果菜類。しかし、茂った葉や枝の間からの収穫作業は従来の手法では選別は困難でした。しかし本技術では、センシング技術と機械学習によって選別を高度化するとともに、医療用ロボットを応用したロボットアームを東工大と開発し、果菜類の選択的収穫を可能にしました。


また、特筆すべきは「農家との共同事業を目指す」としている点です。ロボットは農家に無償でレンタルし、作物収入の15%を利益として受け取るビジネスモデル。ロボットは作業を通じて日々性能を更新し、精度を高めていくことで収量・収入のアップを目指します。2018年10月には佐賀県で実証実験、2019年5月にはβ版ロボットを20台製造する予定で、今後5年で3,000台の生産を目標にしています。

カルチャーフィットを可視化するmitsucari
株式会社ミライセルフ


就職後に分かる会社とのミスマッチ。入社後の早期離職を防止するため、個人と組織双方を対象とした適性検査を活用し、価値観情報をもとに相性を診断するサービス「mitucari」を開発。

簡単かつ高精度の適性検査、結果データの分析、マッチングアルゴリズムの3つを駆使し、スキル以外のミスマッチによって起きる早期離職等の課題を解決。2018年9月までに約2,000社が登録し利用しています。


また、既に蓄積された個人、組織双方の適正検査データから、一般向けの求人マッチングサイトも2018年6月にオープン。わずか3カ月で4,000人を超えるユーザー登録を達成しました。会社との適切なマッチングは、離職率の低下だけでなく、入社後の適切な部署配置、そして生産性向上にもつながっています。表氏は「人と企業のミスマッチをなくし、仕事で不幸を感じている人のいない社会を築きたい」と抱負を語りました。

技術賞受賞者

ORIGAMI HOUSE PORTABLE
株式会社OUTSENSE


提案概要:独自の3次元展開構造物(折り紙技術)を用いた拡縮が行える簡易住居を活用して、被災地でのセキュリティが高い個人空間を被災直後に提供する。


期待される社会的インパクト:災害発生後の最低限の生活環境の確保は大きな課題である。熊本地震では全死者の7割以上を災害関連死が占め、その主たる原因は避難所における避難生活の疲労にあるといわれる。本ビジネスでは独自の折り紙技術を用いた、拡縮・運搬が可能な仮設住居の提供を行う。これにより、セキュリティが高い個人空間を被災後迅速に提供することが可能となり、被災者の被災直後の生活環境の向上に貢献する。

電池診断技術を用いたエネルギーマネジメント事業
ゴイク電池株式会社


提案概要:独自に開発した電池診断技術を用いて、リチウムイオン電池の安全安心を守り、長寿命化を実現する。


期待される社会的インパクト:現在、再生可能エネルギーやEVの普及に伴いリチウムイオン電池が急激に浸透しているが、その発火や爆発のリスクや、容量や寿命の正確なモニタリング等には課題がある。本ビジネスでは、約1秒で性能や容量、劣化度等を計測可能な、当社が新たに開発した電池診断器を用いたエネルギーマネジメントサービスを提供する。これにより、安心・安全にリチウムイオン電池を活用可能な社会の発展に貢献する。

次世代社会インフラの構築
株式会社Drone Future Aviation


提案概要:世界最大級ドローンを活用して、災害時の救護への参入、遠隔離島地域の生活改善、その他生産性の向上や労働力の補填等に挑戦し、「世界を劇的に良くする社会インフラの構築」を目指す。


期待される社会的インパクト:物流業界におけるドライバー不足(2020年には10万人が不足すると予想)を筆頭に、モノの輸送に係る人手不足が社会問題化している。本ビジネスでは、「運べないをなくす」をミッションに、空・陸双方のドローンを活用して自動配送システムを構築する。これにより、物流業界はもとより、災害時の救援物資の輸送など、さまざまな業界でのモノの輸送に係る次世代の社会インフラ構築を目指す。

世界最小クラスの紛失防止IoTデバイス「MAMORIO」
MAMORIO株式会社


提案概要:世界最小クラスのIoTデバイス「MAMORIO」と遺失物発見システム「クラウドトラッキング」を活用して紛失を未然に防ぎ、かつ、紛失物が発見され、手元に戻る仕組みを構築する。


期待される社会的インパクト:日本で落とし物は1年間に2,800万件発生するといわれる。本ビジネスでは、Bluetooth Low Energyを活用した世界最小クラスのIoTデバイス「MAMORIO」を活用し、個人・企業向けに紛失物のアラート・トラッキング等のサービスを提供する。これによりあらゆるモノの紛失に係る課題解決に貢献する。

BOCCOでの高齢者見守りと情報発信
ユカイ工学株式会社


提案概要:離れた家族とコミュニケーションできるロボットBOCCOを活用して、高齢者の見守り、遠隔コミュニケーション等のサービスを提供する。


期待される社会的インパクト:高齢者の急増、介護職員の地域偏在、また介護職員の労働環境の悪化等により、質の高い介護サービスの提供が困難になっている。本ビジネスでは、コミュニケーション機能やセンサーを活用した見守り機能を有するロボット「BOCCO」を開発し、これを活用した高齢者の見守り・コミュニケーションサービスを提供する。これにより、高齢者の定常的な状況把握や介護者とのコミュニケーションの円滑化等を行い、介護事業者の負担軽減、高齢者の生活環境向上に貢献する。

技術賞受賞5社

審査員コメント

小宮山 宏

小宮山 宏

今回の最終審査会は、最後に残った7件だけに、どれも粒ぞろいで魅力がありました。ピッチも今後の活躍を期待させる、素晴らしいものだったと思います。審査結果はこのように出しましたが、その差は本当にわずかなもの。審査も困難を極め白熱の議論となりました。技術的な問題だけでなく、社会課題の捉え方の視点がどうかということも問題になっていた点が印象的でした。今回受賞したT-ICUが切り拓こうとする領域は、とても困難な世界です。そこを乗り越えていくために、我々も頑張っていきたいと思います。今回登壇したすべての企業の皆さんの活躍に期待しています。

リチャード・ダッシャー

リチャード・ダッシャー氏

7社すべての差は、とても僅かなものだったと思います。それは、それぞれの企業に良さがあり、また、それぞれの企業が解決すべき社会問題を明確に持っていたということだと思います。今回、ピッチまでのメンタリングプログラムで、良い形に仕上げてきたと思いますが、今後さらに、柔軟性を持ちながら、アイデアを練り上げ、実現していってほしいと思います。どれも見込みのあるプランだったので私もこれからが楽しみです。

各務 茂夫

各務 茂夫氏

最優秀賞をとったT-ICUをはじめ、どのスタートアップも素晴らしいものであることは論を俟ちませんが、「殺し文句」があると、より良かったと思います。例えばT-ICUなら「これのおかげでこんな合併症を防ぎました」のような一言。誰もが腹落ちする、思わず膝を打つような文句があると、ソリューションを導入する意味、改革することの意義が明らかになるのではないでしょうか。これは今日の登壇企業すべてに言えることでしょう。今後はそこに留意してピッチすることで、より良いものになると思います。

鎌田 富久

鎌田 富久氏

受賞した皆様、おめでとうございます。惜しくも受賞されなかった皆様、あまり残念に思う必要はないと思います。技術賞も含めて、どれも大きな差がなかったというのが今回の印象です。結構いいところまで来ているのだが、どうスケールするのかにお悩みだった企業が多いと思いますが、それこそがベンチャーの醍醐味、面白いところだと思います。こういうコンテストに出てきたことをきっかけにして、チャンスを掴んでほしい。そのために我々もお手伝いしていくつもりです。今後の皆さんの活躍に期待しています。

宮城 治男

宮城 治男氏

昨年までのビジネスアイデアコンテストとは異なり、アクセラレーションということで、一歩進んだステージの皆さんのピッチを聞いて、とても頼もしく思いました。しかし、資金調達しようというようなステージになると、だんだん当初の志から離れ、短期的に、小さくまとまろうとする傾向が見えてくることがあります。こういう審査会では、皆さんの志、夢を語るところに心を打たれるところがあるので、青天井に語って欲しいと思いました。審査でも、VCは大事だが、その先にいる株主、ユーザーの視点も変わってきているんじゃないか、一見無謀に見える、簡単に勝ち目があるか分からない課題解決や社会性の未来に期待している人が増えているという議論が出ました。その意味でも、自信を持って、本当にやりたいことを貫いてチャレンジしてほしいと思います。そこに新たな支援者が集まって、新しい領域へと突破していけるようになると思います。

ビジネス・アクセラレーション・プログラム 2018